パレスチナ 1948・ナクバ
2008.06.29 Sunday
入梅してからずっと続いていた空梅雨を吹き飛ばすような、昨夜からの雨が1日降り続く、じめじめと蒸し暑い今日、シネモンドにてパレスチナ1948・ナクバを見てきました。
パレスチナについての知識はもちろん、この映画についても先日たまたま入った飲食店でもらったシネモンドのスケジュールに書かれていた”1948年の事件。世界のほとんどが何も知らない。”というキャッチコピーに目を惹かれ、以前『ミュンヘン』で衝撃を受けた身としては、もう一方の当事者のことも知っておかなきゃ、くらいの気持ちで行きました。
イスラエルが建国された1948年、70万人以上のパレスチナ人が難民となった。今もなお続く動乱の中東の核心にはNAKBA(大惨事)と呼ばれる事件があった。数々の戦場を取材してきたフォトジャーナリスト広河隆一。「被害者側にどんなことが起こっているのか。それを調べ、伝えるのがジャーナリストの役割」を信念とする彼が、40年間パレスチナを追い続け、廃墟と化した地図から消えていった村々を徹底取材し、パレスチナ人の痛みに迫る渾身のドキュメンタリーを歓声させた。いまだ終焉をみない中東の悲劇、遠い国の話ではなく人類が繰り返して着た悲劇。 シネモンド発行月刊シネマガイド7月号より
冒頭、広河氏が撮影したモノクロ写真が字幕入りで紹介され、全編写真のみの構成なのかな?と思った途端、映像がカラーへと変わり画面が動き出しました。広河氏がかつて、イスラエル在住時に働いていた場所を尋ねるところから始まります。そこで氏が偶然目にした、荒れ果てた石だらけとなった廃墟に疑問をもち、調べていくうちに彼が知った驚愕の事実。彼が撮影した写真や映像、そして当時を生き延びたパレスチナ、イスラエル双方の人々が雄弁に語る内容にただただ打ちのめされました。
恥ずかしいくらい、パレスチナというものに関して無知だったことを改めて思い知るとともに、スクリーンを通して問いかけてくるものがあまりに重すぎて、途中から見るのが苦しくなりました。何かを訴えかけずにはいられない映像を凝視し、聞きなれないヘブライ・アラビア語に耳を傾けながら字幕を追う、という作業が思いのほか辛く、たまに英語が流れてくるとほっとする、という妙な感覚を味わいました。
人類史上、例を見ない悲惨なホロコーストを生き延びたユダヤ人たちが、今度はパレスチナ人に対し、方法は違えど同じような侵略・弾圧・虐殺を行っていたという事実以上に、自分がそれについて何も知らなかった、ということがよりショックでした。イスラエルが建国された当時の出来事は、生まれる前の遠い出来事、と言い訳できても1982年に起きたレバノン侵攻について全く記憶にない、という事実。その数年前に起きたソ連によるアフガニスタン侵攻は小学生ながら記憶しているというのに。
映画の中で紹介されていた、消された村についての資料を公開している、資料館の館長の「世界中の人々はホロコーストにはとても興味を持ち、本も沢山出ている。なのに、(虐殺があったと)パレスチナ人の言うことは嘘だと言い、耳を傾けてくれない。何故?」という言葉が胸に突き刺さりました。
82年のレバノン侵攻時に起きた虐殺を生き延びたパレスチナ難民、メルバットとキファーの姉妹の物語は、全編緊張感の連続の中で唯一、希望を感じられるほっとする瞬間でしたが、それでも、武装ゲリラのメンバーとして活動中に捕らえられ、6年間もの投獄生活を過ごした姉キファーが、出獄後「収容所は完璧だった。戻りたい」と語る姿には、言葉がありませんでした。その後、結婚して多くの子供達に囲まれているシーンに心からほっとしました。
そもそも自分達は選ばれた民である、という選民思想も理解しがたいですが、それ以上にパレスチナの人々から奪った地の多くは、ユダヤ人が居住地として使用するのではなくただ廃墟と化している、ことに強い憤りを感じます。ある日突然、長年暮らしてきた土地を追われ、自分達の村が目の前で爆破されるのを見てしまった側の人の気持ちを彼らは何故考えなかったのか。
しかしながら、ユダヤ人の全てが自分達は正しいと思っているわけでなく、当時も今も占領に反対する人々がいることが僅かな救いだと感じました。
あまりに一度に色んなことを見たせいで、どういう風に伝えたらいいのかわかりません。本当なら、1人でも多くの人にこの作品を見て欲しい、と言うべきなのですが、あまりに重過ぎて苦しくて、簡単に見てください、とは言えません。私自身、もう1回この映画を見るか?と聞かれたら、、少し時間をくださいと言ってしまいそうです。
とりあえず、これまであまりに知らなさすぎたことへの反省も込めて、広河氏が書かれた中東問題に関する書物を読んでみることから始めたいと思います。
この映画を作る基になった広河氏の長年の苦労や、この映画を製作・公開する為に奔走した方々の努力に心から感謝したいと思います。
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